(快く無償で調査にご協力下さった同期のI先生、本当にお世話になりました。ありがとうございました。)
そこで、公示送達を申し立てていたところ、本日、裁判所から公示送達を採用する旨の電話連絡を受けました。
民事訴訟法
第110条 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
1 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
第111条 公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。
第112条 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過することによって、その効力を生ずる。
しかし、最初の送達は「不在」で戻り、次に休日送達がなされましたが、やはり「不在」で戻りました。
そこで、次の手続に進むためには、被告の住所地に赴いて、実際にそこに居住しているか否かを確かめる現地調査が必要になります。
しかし、私が交通費と日当をもらって行ったのでは、その実費が被害者の負担となってしまうため、現在他の手段を検討中です。
仮に、被告がそこに住んでいないことが明確になれば、公示送達に進むことになり、逆に、被告がそこに住んでいることが明確になれば、書留郵便に付する送達に進むことになります。
しかし、例えば都会の単身者用賃貸集合住宅では、そもそも外形から誰が住んでいるか容易に判別できず、本人も近隣も殆ど不在であることが多いため、やっかいな問題です。
なお、弁護士には、職務上の正当な必要性があれば住民票を調査する権限があるのですが、調査の結果、被告は住所地に住民票を置いていましたので、少なくとも実在する人物のはずです。
本日、回答書を謄写しましたが、銀行は、口座名義人の住所と氏名(漢字)を明らかにしました。
最初から、弁護士法23条の2に基づく照会に対して回答してくれれば、こういう面倒な話にはならないわけですが、ともかく、これにより、ようやく被告の住所・氏名が明らかになったわけです。
たったこれだけのことのために、昨年10月1日の提訴から丸4か月かかったことになります。
さて、これから、訴状訂正申立書(被告の住所・氏名の訂正)を作成し、明日提出する予定です。
ここからは、全く普通の民事訴訟のルートに乗りますので、第一回口頭弁論期日の指定から訴状の送達へと進みます。
被告が不在で訴状が不送達となれば、公示送達の問題になります。
事件番号が新たに付され、担当裁判官も代わり、完全に新件として取り扱われています。
本日、裁判所(新しい担当裁判官)が、調査嘱託を採用しました。
共同配信記事
裁判所から銀行に対し、口座名義人の住所・氏名を照会する書面が送付されますので、まずは、銀行からの回答を待つことになります。
万が一、銀行が調査嘱託への回答も拒否すれば、いよいよ銀行を提訴するしかありません。
この反応は、全く予想の範囲内であり、そうであるからこそ、問題を広く報道してもらい、法律専門職の内輪のディベートで終わらせず、社会一般の「常識」を問うた意味があったのです。
裁判手続内で粛々と事を進めた場合、裁判官の純理論的な検討の結果、訴状審査における裁判長の裁量権等を根拠に、粛々と抗告棄却されて終わるだろうと思っていました。
そもそも、弁護士が出した訴状が却下されるなど、これ以上なく恥ずかしい話ではありますが、さらに抗告棄却で恥の上乗りをするリスクを取って、報道してもらいました。
そうしなければ確実に「負ける」と思ったからです。
この問題が広く報道されて、高裁の結論に注目が集まる事態になっても、正直、私は悲観的でした。高裁から到着した郵便の封を切るまで、抗告棄却だろうと予想しており、特別抗告状と許可抗告申立書も起案済みでした。
しかし、高裁の決定は、良い意味で私の予想に反し、事案の実状から素直に結論を導いたものでした。
そうであるがゆえに、法理論的には、決着が付いてない部分が多々あるとも言えます。
当事者の特定が訴訟要件である趣旨、特定の有無の判断基準(原則と例外)、訴状審査時と口頭弁論終結時の差異の有無、裁判所の調査義務の有無・範囲など。
さらに、今後、調査嘱託が義務的なものとして行われても、仮に銀行が回答を拒否した場合、どうなるのか。
訴状却下するとすれば、銀行の回答如何で、訴訟要件が左右されることの妥当性、整合性。
訴状却下しないとすれば、どうやって進行させるのか(公示送達?)。
仮にカタカナのまま判決した場合、被告名義の預金の差押が手続的に可能か(蔭山弁護士が取られた東京高裁の執行抗告認容決定の問題)。
などと、いろいろ考えていくと、だんだん知的パズルの迷路に入り込んでいって、理屈のための理屈をこねくり回すようになってしまいます。一体全体、事案の妥当な解決がどこにあるのか、という出発点が見えなくなってくるわけです。
私自身も、抗告理由を起案しながら、考えさせられるところがありました。
「素人に理解可能な議論をしよう」と高裁に呼びかけたのは、自戒も込めた言葉です。
北日本新聞記事
決定文を以下に引用しますので、今後の訴訟等にご活用下さい。
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平成16年(ラ)第99号 訴状却下命令に対する即時抗告事件
(基本事件:富山地方裁判所平成16年(ワ)第315号)
決 定
富山県○○
抗告人(基本事件原告) ○○
同訴訟代理人 弁護士 福 島 武 司
住所不詳
相手方(基本事件被告) ヨシザワジュンイチ
主 文
原命令を取り消す。
理 由
第1 本件抗告の趣旨及び理由
別紙の「即時抗告の申立書」に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 本件は,抗告人(基本事件原告)が,氏名不詳の者から騙されて「ヨシザワジュンイチ」名義の銀行預金口座に100万円を振込送金して同額の損害を被ったことから,上記預金口座の名義人の「ヨシザワジュンイチ」に対し,不法行為に基づき,上記の100万円,慰謝料10万円,弁護士費用10万円の合計120万円及びこれに対する平成16年8月2日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた訴訟において,訴状の被告の住所及び氏名の表示として,「住所不詳,ヨシザワジュンイチ」と記載したところ,原審裁判所が,抗告人に対し補正を命じた上,被告の住所及び氏名が特定されていないとして訴状を却下したため,これを不服とする抗告人が本件抗告を申し立てた事案である。
2 記録によれば,抗告人は,訴状において,不法行為に基づく損害賠償請求の相手方である被告の表示につき,被告名を「ヨシザワジュンイチ」と,住所地を「住所不詳(後記する振込先預金口座の登録住所)」とそれぞれ記載した上,その振込先預金口座として,「三井住友銀行永山支店,普通預金,口座番号○○,名義人ヨシザワジュンイチ」と記載していることが認められる。
そして,銀行預金口座を開設するに際しては,口座開設者の氏名,住所等を記入した申込書の提出を要すること(顕著な事実。しかも,書類等により口座開設者が本人であることの確認などもすべきものとされている。)を踏まえると,抗告人は,上記預金口座を開設した自称「ヨシザワジュンイチ」なる人物を本件の被告として訴訟を提起したことが明らかである。
3 なるほど,訴状の被告名は上記預金口座の名義人である片仮名の名前にすぎず,しかも,住所表示(訴状送達の便宜等のために有益であり,また,被告を特定する上で有用であることから実務上記載されるのが一般である。)は「不詳」とされている。しかし,抗告人は,本件訴訟提起前に,弁護士照会等により,所轄の滑川警察署長及び上記預金口座のある三井住友銀行永山支店宛に「ヨシザワジュンイチ」の住所及び氏名(漢字)を問い合わせるなどの手段を尽くしたものの,協力が得られず,やむなく上記の記載の訴状による訴えを提起したことが認められる。そして,抗告人は,本件訴訟提起と同時に上記銀行に対する調査嘱託を申し立てているところ,これらの方法により,「ヨシザワジュンイチ」の住所,氏名(漢字)が明らかとなり,本件被告の住所,氏名の表示に関する訴状の補正がなされることも予想できる。
したがって,本件のように,被告の特定について困難な事情があり,原告である抗告人において,被告の特定につき可及的努力を行っていると認められる例外的な場合には,訴状の被告の住所及び氏名の表示が上記のとおりであるからといって,上記の調査嘱託等をすることなく,直ちに訴状を却下することは許されないというべきである。
4 よって,本件訴状却下命令を取り消すこととして,主文のとおり決定する。
平成16年12月28日
名古屋高等裁判所金沢支部第2部
裁判長裁判官 安江 勤
裁判官 渡邊和義
裁判官 田中秀幸
「『振り込め詐欺』で分かれる判断
どうなる被害者救済?
富山地裁は門前払い/山口地裁は訴え認める
口座名義人特定で差」
という見出しの解説記事が掲載されました。
この間、この問題を取材されていた河野通高記者によるもので、一般の方にも分かりやすく、詳しい説明がなされています。
警察は、当該銀行支店に捜査関係事項照会を行って、口座名義人の住所・氏名を把握しています。
そこで、弁護士法23条の2に基づく照会を警察に対して行いましたが、
「未送致事件であることから回答を差し控える」
として拒否されました。
この点について、訴状却下された民事訴訟とは別に、富山県公安委員会に対し、警察法に基づく苦情申出をしました。
要旨は、以下のとおりです。
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当職は、いわゆる「オレオレ詐欺」被害者の代理人弁護士として、弁護士法23条の2に基づき、被害金振込先の口座名義人の住所・氏名を滑川警察署に対して照会したが、回答を拒否された。
「オレオレ詐欺」被害者に対し、犯罪に用いられた口座名義人の情報を開示しないことは、その被害回復のための行動を不可能にし、ひいては被害者に泣き寝入りを強いる、不当な職務執行というべきである。
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これに対し、本日、富山県公安委員会から回答が来ました。
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苦情処理結果通知書
平成16年12月7日
福島武司様
富山県公安委員会
あなたからの申し出に関し、当公安委員会から富山県警察本部に指示し調査した結果について、次のとおり通知します。
あなたが照会された事項は詐欺容疑事件の具体的な捜査事項に関するものであり、刑事訴訟法などが規定するとおり捜査には守秘義務が求められることなどから、滑川警察署長が回答を控えたことは致し方ないものと認められます。
ただし、被害者の権利も尊重する必要があり、県警察としては、口座開設銀行に対し当該口座の凍結をお願いしたものであります。
以上のとおり、通知いたします。
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要するに、
「口座凍結してやったんだから有り難く思え、捜査情報の開示などできるわけないだろ」
というお答えでした。
警察は、口座の凍結しかやりません、宣言です。
これで銀行も弁護士照会に答えないとすれば、やっぱり、裁判所に頑張ってもらうしかないわけです。

