被害金の返還、迅速に=救済法が成立−振り込め詐欺
苦闘の日々から3年、ようやく立法的解決がなされることになりました。
振り込め詐欺は、日々形を変えて被害者を拡大し続けており、終息の兆しは見えません。
最初に法律相談を受けてから、9か月が経過しています。
全体的な経過は↓
差押え・転付命令の発令日は4月26日、第三債務者(銀行)への送達日は4月27日、債務者(口座名義人)への送達日は5月28日でした。
債務者への送達にこれだけの時間がかかったのは、公示送達によったためです。
まあ、ともかく、法的手続きによって預金を回収しようとすると、こういうペースになるのです。
債務者への送達から1週間の抗告期間が経過して、ようやく転付命令が確定し、差し押さえた人への預金債権の移転という効力が生じます。
したがって、来週、銀行と連絡を取って、差し押さえた預金の取り立てについて、具体的に協議することになります。
遠隔地なので取りに行けませんし。(^_^;
同支店は、第三債務者に対する陳述催告に応えて、4月27日付けの陳述書を送付してきました。要旨は、以下のとおりです。
1 債権差押命令正本の差押債権目録記載の債務が「ある。」
2(1)債務の種類「普通預金」
(2)債務の額「1,001,460円」
3 差し押さえられた債務を債権者に、「支払う。」
これにより、ようやく、振込先の口座に預金が残っていることが確認されました。
やれやれです。
共同配信 KNB
口座名義人の不法行為責任を認めた判示部分については、簡にして要に、核心を突いており、このような法的評価がスタンダードになっていくことを、強く期待します。
今後は、預金債権(問題の口座)の差押手続の準備に移ります。
【参考】東京地裁民事第21部債権執行事件受付係インフォ
なお、振り込んだお金が未だ口座に残っているか否かは、差押決定の送達を受けた銀行から「第三債務者の陳述書」が返ってきたときに、初めて正式な回答を得ることができます。
--------
平成17年4月14日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成17年(ワ)第○○号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年4月7日
判 決
富山県○○
原 告 ○○
同訴訟代理人 弁護士 福 島 武 司
住居所不明
最後の住所 ○○
被 告 ○○
主 文
1 被告は,原告に対し,120万円及びこれに対する平成16年8月2日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
事 実
1 請求の趣旨
主文同旨
2 請求の原因
(1)原告の子供及び法律の専門家を装った氏名不詳者ら及び被告は,共謀の上,平成16年8月2日,原告に対し,原告の子供が交通死亡事故を起こしたと偽り,直ちに保釈金として100万円を送金しないと子供が警察署に留置されると誤信させ,原告をして,同日,指定された被告名義の銀行口座に100万円を送金させ,これを騙し取った。
(2)原告の損害
ア 騙取された額100万円
イ 慰謝料10万円
原告は,警察や銀行への度重なる事情説明を強いられ,家族間の関係も悪化することになり,多大の精神的苦痛を被った。
ウ 弁護士費用10万円
(3) よって,原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,120万円及びこれに対する不法行為の日である平成16年8月2日から支払い済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
3 被告は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出席しない。
理 由
1 甲1及び2号証によれば,請求の原因(1)の事実が認められる。
なお,本件証拠によれば,被告が欺岡行為に直接加担したとまでは認められないが,少なくとも,被告は,詐欺等の犯罪行為に使用されることを認識した上で,自らの口座を流通させたことは推認でき,その口座が本件不法行為の実行に不可欠であったことを考慮すれば,被告に不法行為責任を認めることができる。
2 原告の損害
前記認定事実によれば,原告は,100万円を騙し取られたことが認められる。
慰謝料及び弁護士費用については,各10万円が相当である。
3 以上によれば,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。
富山地方裁判所民事部
裁 判 官 永 野 圧 彦
公示送達ですので、被告は当然欠席です。
訴状陳述、書証2通(原告の陳述書、ATMの振込控え)取調べの上、弁論終結となり、判決期日が4月14日に指定されました。
判決で勝訴すれば、預金債権の差押え手続に移ります。
3月31日の記事で触れた債権者代位訴訟の判決文
H17. 3.30 東京地方裁判所 平成16年(ワ)第14793号
代位訴訟の要件論
「原告らは電話をかけてきた氏名不詳者らに対し振込金と同額の不当利得返還請求権を有し、その氏名不詳者が振込先として指定した各銀行口座を所有しているものと認められるところ、所在も明らかでない氏名不詳者に対して直接債務名義を取得する方法は現行法制上存在しないし、当該氏名不詳者の財産と認められるものは上記各口座についての預金払戻請求権以外には見当たらないのであるから、原告らとしては、自己の不当利得返還請求権を保全するには当該預金払戻請求権を代位行使するほかなく、保全の必要性は優に認められる。」
不当利得返還請求権の相手方を、口座名義人ではなく、実際に電話をかけてきた氏名不詳者とし、預金口座の所有者も、氏名不詳者である(口座名義人ではなく)と認定した上で、氏名不詳者の財産は預金以外見あたらない、という形で、代位の要件をクリアさせています。
事案の実態を素直に捉えた事実認定だと思いますが、理屈として詰めていくと、いろいろと問題がありそうです。
また、無資力を正面から認定したのか、それとも、転用(もしくはそれに近いもの)に位置付けられるのか、判決文の文理からは明確でないように思われます。
各方面からの判例評釈を待ちたいところです。
朝日新聞の記事より
おれおれ詐欺の被害者が、振込先の預金口座(凍結済み)のある銀行に対し、債権者代位訴訟を提起して、勝訴したと報道されています。
この手法のメリットは、カタカナ氏名しか分からない口座名義人を相手にせず、直接銀行を訴えるので、被告の特定や所在調査という、訴訟の入り口での難点(正に私の担当している事件で直面した)を回避できることです。
私の担当事件でも、万が一訴状却下命令が確定したら、次にこれをやろうかと検討していました。
しかし、債権者代位訴訟は、代位される債務者の「無資力」(他に見るべき財産を持っていないこと)が要件となります。
そして、被告である銀行は当然応訴してきますから、被害者の側で、口座名義人の「無資力」を立証しなければなりません。
この無資力要件の立証が簡単であれば(例えば、極端な話、犯罪に利用される口座を作るようなやつは、無資力に決まっている、という経験則を適用したり)、非常に有力な被害救済手段となります。
この点、どのような根拠、もしくは手法で無資力要件をクリアさせたのか、今回の判決文の内容が注目されます。
裁判所のHPで素早く公開してほしいものです。
それにしても、提訴から判決まで8か月も経過しており、さらに銀行が控訴する可能性も残っていますから、決して使い勝手のよい救済手段とは言えませんが。
一方、口座名義人を訴えるやり方は、訴訟の入り口での難点はありますが、そこを突破できれば、被告が応訴してくる可能性は実際上殆ど考えられませんので、訴訟の中身は概ね1回の期日で済み、早期に判決が得られます(私の担当事件では、訴状却下→即時抗告となったため、数か月空転しましたが、最初から訴状が受理されていれば、とっくに終わっていました)。

