福島武司法律事務所 業務日誌
弁護士福島武司の業務日誌です(不定期更新)
即時抗告事件、雑感
訴状却下命令の第一報が共同通信(東京の司法記者クラブ)から流れたときの反応ですが、友人や親戚などの「素人」は、本気で驚いたり怒ったりしていました。しかし、法律知識がある人ほど、容認する傾向が強いようでした(ブログや巨大匿名掲示板などを見て回ると)。
この反応は、全く予想の範囲内であり、そうであるからこそ、問題を広く報道してもらい、法律専門職の内輪のディベートで終わらせず、社会一般の「常識」を問うた意味があったのです。

裁判手続内で粛々と事を進めた場合、裁判官の純理論的な検討の結果、訴状審査における裁判長の裁量権等を根拠に、粛々と抗告棄却されて終わるだろうと思っていました。
そもそも、弁護士が出した訴状が却下されるなど、これ以上なく恥ずかしい話ではありますが、さらに抗告棄却で恥の上乗りをするリスクを取って、報道してもらいました。
そうしなければ確実に「負ける」と思ったからです。

この問題が広く報道されて、高裁の結論に注目が集まる事態になっても、正直、私は悲観的でした。高裁から到着した郵便の封を切るまで、抗告棄却だろうと予想しており、特別抗告状と許可抗告申立書も起案済みでした。
しかし、高裁の決定は、良い意味で私の予想に反し、事案の実状から素直に結論を導いたものでした。

そうであるがゆえに、法理論的には、決着が付いてない部分が多々あるとも言えます。
当事者の特定が訴訟要件である趣旨、特定の有無の判断基準(原則と例外)、訴状審査時と口頭弁論終結時の差異の有無、裁判所の調査義務の有無・範囲など。
さらに、今後、調査嘱託が義務的なものとして行われても、仮に銀行が回答を拒否した場合、どうなるのか。
訴状却下するとすれば、銀行の回答如何で、訴訟要件が左右されることの妥当性、整合性。
訴状却下しないとすれば、どうやって進行させるのか(公示送達?)。
仮にカタカナのまま判決した場合、被告名義の預金の差押が手続的に可能か(蔭山弁護士が取られた東京高裁の執行抗告認容決定の問題)。

などと、いろいろ考えていくと、だんだん知的パズルの迷路に入り込んでいって、理屈のための理屈をこねくり回すようになってしまいます。一体全体、事案の妥当な解決がどこにあるのか、という出発点が見えなくなってくるわけです。
私自身も、抗告理由を起案しながら、考えさせられるところがありました。
「素人に理解可能な議論をしよう」と高裁に呼びかけたのは、自戒も込めた言葉です。