「『振り込め詐欺』で分かれる判断
どうなる被害者救済?
富山地裁は門前払い/山口地裁は訴え認める
口座名義人特定で差」
という見出しの解説記事が掲載されました。
この間、この問題を取材されていた河野通高記者によるもので、一般の方にも分かりやすく、詳しい説明がなされています。
今年は、昨日の午後に開催されました。
個々の事件の利害関係と離れて、裁判官と弁護士が同じ高さで話し合う機会は、非常に貴重なものです。
昨日の協議では、弁護士会から、「訴え提起時の当事者の特定」に関する問題が発題され、活発な議論が行われました。
ちなみに、私は一言も発せず、皆さんのご意見を拝聴することに集中していましたので、念のため。
この協議会は、裁判所と弁護士会の信頼関係に基づいて行われており、協議内容の公開は予定されていませんので、ここではご紹介できません。
協議内容とは関係なく、昨日の議論全体を聞いた感想としては、弁護士は、具体的な事件における妥当な結論(この事件ではこうなるように理屈を考えたい)を議論の出発点に置くのに対し、裁判官は、抽象的な規範としての当否(その理屈を押し進めると他の事件で不都合にならないか)を議論の中心に置く、という傾向があるように思いました。
…と書いてみて思いましたが、なんて陳腐な分析だ。
職業柄、当然のことを言っているだけだ。
しかし、岡口さんのHPの影響力は凄いですね。
カウンターがぐるぐる回って、リファラーの殆どを占めています。
それだけ、「現職の裁判官」の発信する情報が貴重であり、多くの方に注目されているんでしょうね。
裁判官が実名でHPを持つことについては、裁判所内的にいろいろと面倒なこともあるでしょうし、職場のパソコンでは更新できないでしょうし、何しろ弁護士と違って責任重大な立場だし、大変だろうなあと(漠然と)想像しています。
これからも是非頑張っていただきたく。
警察は、当該銀行支店に捜査関係事項照会を行って、口座名義人の住所・氏名を把握しています。
そこで、弁護士法23条の2に基づく照会を警察に対して行いましたが、
「未送致事件であることから回答を差し控える」
として拒否されました。
この点について、訴状却下された民事訴訟とは別に、富山県公安委員会に対し、警察法に基づく苦情申出をしました。
要旨は、以下のとおりです。
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当職は、いわゆる「オレオレ詐欺」被害者の代理人弁護士として、弁護士法23条の2に基づき、被害金振込先の口座名義人の住所・氏名を滑川警察署に対して照会したが、回答を拒否された。
「オレオレ詐欺」被害者に対し、犯罪に用いられた口座名義人の情報を開示しないことは、その被害回復のための行動を不可能にし、ひいては被害者に泣き寝入りを強いる、不当な職務執行というべきである。
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これに対し、本日、富山県公安委員会から回答が来ました。
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苦情処理結果通知書
平成16年12月7日
福島武司様
富山県公安委員会
あなたからの申し出に関し、当公安委員会から富山県警察本部に指示し調査した結果について、次のとおり通知します。
あなたが照会された事項は詐欺容疑事件の具体的な捜査事項に関するものであり、刑事訴訟法などが規定するとおり捜査には守秘義務が求められることなどから、滑川警察署長が回答を控えたことは致し方ないものと認められます。
ただし、被害者の権利も尊重する必要があり、県警察としては、口座開設銀行に対し当該口座の凍結をお願いしたものであります。
以上のとおり、通知いたします。
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要するに、
「口座凍結してやったんだから有り難く思え、捜査情報の開示などできるわけないだろ」
というお答えでした。
警察は、口座の凍結しかやりません、宣言です。
これで銀行も弁護士照会に答えないとすれば、やっぱり、裁判所に頑張ってもらうしかないわけです。
午後1時から3時半の間に、5名の相談を受けました。
相談を受けた分野は、融資保証金詐欺被害、遺言、土地賃貸借、不動産相続手続、マルチ商法でした。
富山県弁護士会ホームページより法律相談のご案内
まあ、協議といっても、その内実は、かなりの部分、弁護士が裁判所に教えてもらうという感じですが。
各地の裁判所でも、行われているようですね。
Legal Blog 「シンク」より
富山では、この種の協議会に弁護士が30人ぐらい集まるので、裁判所の担当部と実際に事件を処理する弁護士とのコミュニケーションが、非常にスムーズなのですが、大都市圏の裁判所だと、どうなるんですかね…。
同委員会は、人権侵害を受けたとする個人からの申立を受けて、事実関係を調査し、人権侵害があったと認められる場合には、侵害した責任主体に警告や勧告などを行って救済を図る活動を行っています。
実際には、富山刑務所に在監している刑事被告人・受刑者からの申立が、大部分を占めています。
刑務所の処遇に不服がある場合に、現在の法律では第三者機関に正規の不服申立をする制度がないため、代わりに弁護士会の調査を求めてくるわけです。
とはいえ、弁護士会の調査には強制力がないため、申立人と刑務所とで真っ向から言い分が対立する事実関係の調査には、難渋することになります。
また、弁護士会が人権侵害があったと認定して、刑務所に警告や勧告を行っても、これまた法的拘束力がないため、言いっぱなしで終わってしまう(無視される)ことになりがちです。
名古屋刑務所事件(革手錠・保護房の使用による暴行陵虐致死事件)が発生する以前から、日弁連や各地の弁護士会は、革手錠・保護房の使用で人権侵害が多発していると、繰り返し法務省と各地の刑務所に警告してきました。しかし、当局は、人権侵害など一切起きていないとして無視し続け、ついに、あのような大事件を引き起こすに至ったのです。
刑務所のような閉ざされた組織では、外部への不服申立制度を認めないと、必ず、内部の庇い合いで腐敗します。日常的に人権侵害が蔓延し、ついには、組織そのものの信頼を根底から覆す大事件(名古屋のような人殺し)を発生させることになります。
その意味で、第三者機関への不服申立を認め、外部から過誤の存在を指摘してもらうことは、むしろ組織の健全性・信頼性を担保するものです。
しかし、日本の刑務所システムは、戦前・戦後を通じて根本的に変革される機会を持たなかったため、100年にわたり「無謬」神話が支配してきました。「間違いが起きない以上、間違いを糾す制度はいらない」という論理が、今もまかり通っているのです。
そういうわけで、強制調査権も法的拘束力もない虚しさ(+犯罪者に人権なんかイラネという冷たい視線)と闘いながら、今日も、人権侵害事件の調査と認定に、多くの弁護士の労力が投入されています。
ちなみに、委員の活動は一切無報酬、刑務所往復のガソリン代も自腹です。
12月6日提出です。
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第1 本件訴状の必然性ー事案の特質より
1 事案に即した法解釈を
本件の訴状審査においては、以下に述べるような、いわゆる「おれおれ詐欺」被害の特質を踏まえ、事案に則した実際的な法解釈がなされるべきである。
2 おれおれ詐欺被害の爆発
公知の事実ではあるが、おれおれ詐欺は極めて深刻な被害を日本全国にもたらしている。一般市民にとっても「ごく身近な」犯罪となり、市民生活に重大な脅威を与えている。
警察庁の発表によれば、おれおれ詐欺の被害金額は、昨年1年間で43億円に達したが、さらに、本年1月から9月までのわずか9か月間で、129億円を超えた。しかも、1か月ごとの被害金額も、4か月連続で過去最悪を更新し続け、本年9月だけで29億円に及んだ。また、1件当たりの被害額も、昨年の約100万円から、今年は約250万円に上昇している。
おれおれ詐欺事件は、凄まじい勢いで蔓延し、爆発的に被害を生みだしている。
3 検挙されない犯人グループ
おれおれ詐欺犯は、本人確認のずさんなプリペイド式携帯電話を用いて被害者を欺罔し、不正に入手した銀行口座に振り込ませて犯行に及ぶため、被害者との直接の接触はなく、実行犯の痕跡は殆ど残さない。したがって、上記のように甚大な被害をもたらしながらも、犯行グループが検挙されたという報道は殆どない。
上記警察庁の発表によれば、事件数および検挙数は次のとおりである。
平成15年 平成16年1〜9月
認知件数 6,504件 11,004件
うち既遂犯 4,319件 6,858件
検挙件数 179件 694件
これを基に、検挙件数を認知件数で除して、単純に検挙率を試算すると、以下のとおりとなる(小数点3位四捨五入)。
15年 :2・75%
16年1〜9月:6・31%
本年に入り、若干上昇は見られるが、それでもわずか6%強に過ぎない。被害者が16人いれば、そのうち15人は、犯人を捕まえてもらえない計算になる。すなわち、おれおれ詐欺事件の被害者にとって、加害者(犯人グループ)を警察に捕まえてもらうことは、実際問題、期待できない。
4 犯行の巧妙さ
おれおれ詐欺は、高度に組織され、訓練された犯罪者集団によって行われている。今や、「劇団型」とさえ呼ばれる程に、犯人グループの練度が高まり、巧妙極まりない犯行が、日常的に行われている(おれおれ詐欺を教える学校が摘発されたという報道も、記憶に新しい。)。電話口に、自称家族や、多数の自称関係者が次々と現れ、言葉巧みに被害者を翻弄し、あっという間に多額の金員を騙し取るのである。もはや、「おれおれ」というような単純な欺罔行為は、存在していない。
このような特質は、日々マスコミが報じるところであり、公知の事実となってはいるが、例えば、北日本新聞11月30日朝刊15面の記事では、実際に詐欺の手口を体験した主婦の経験談が掲載されている。
「主婦は最初、突然の知らせに驚きながらも『もしかしておれおれ詐欺?』と冷静だった。だが、夫の名前を知っていることや、話が細部まで具体的だったことから、つい引き込まれてしまった。」
また、朝日新聞12月1日朝刊19面にも、実際に体験した主婦の投稿が掲載されている。同投稿は以下のように記す。
「まさか我が家にはと、途中まですっかり信じ込んでしまった私。詐欺劇団の巧妙さに圧倒されました。」
これらの体験談が語る欺罔行為の内容は、本件とも驚くほど一致している。近親者の情愛に付け入るその犯行は、巧妙であると同時に、卑劣極まりない。
マスコミを通じて、おれおれ詐欺の知識を得ている人間でさえも、高度に組織され、訓練された巧妙な犯罪集団の演技に翻弄され、騙されてしまうのである。したがって、詐欺事件にありがちな、騙される方も悪い、というような論評は、少なくとも、おれおれ詐欺事件には、全く当てはまらない。
5 打ちのめされる既遂事件の被害者
ところで、上記のようにマスコミに登場するのは、未遂事件の当事者ばかりである。
現実の被害金額が100億円を超え、全国に実害を受けた被害者が何千人もいるにもかかわらず、何故、その人々は、マスコミに登場しないのか。
しかし、そのような問いは、愚問である。
被害者の実情を言えば、多大な経済的打撃を受けた上に、精神的にも、騙されてしまった自分を責め、家族からは責められ、世間に対して恥ずかしいという思いに苛まれ、息を潜めるようにして生きているのである。周囲の人間に、被害を受けたことを打ち明けることすら憚られる状況で、まして、マスコミの前に出て、自らの想いを雄弁に物語ることなど、できようはずもない。
また、被害を声高に訴えたからといって、上記のとおり、犯人は殆ど逮捕されず、虚しい徒労でもある。
本件でも、後記するとおり報道機関に広く報道されたことから、抗告人に対し、テレビ局からインタビュー要請がいくつも寄せられたが、抗告人は全て断った。事件について、カメラの前で直接取材を受けることなど、実際の被害者には、精神的に到底耐えられないからである。
本件を審理するに当たり、日本全国に、おれおれ詐欺被害に打ちのめされ、ただ黙って堪え忍んでいる多数の被害者がいることを、忘れてはならない。
6 被害者が保有する犯人側の情報
前記のとおり、おれおれ詐欺犯は、プリペイド式携帯と銀行口座を利用することにより、被害者と直接接触せず、実行犯の痕跡を残さない。
また、被害者は、銀行振り込みをするに当たり、ATMを利用することになる。これは、犯人側からの誘導もあるし、精神的に切迫している被害者は、近時の大規模な銀行統廃合の影響から混雑する窓口の利用を避け、ATMによる即時の振り込みを選択するからでもある。
このような犯行形態では、被害者には、実行行為者の人定事項は、一切入手できない。
唯一、被害者の手元に残る証拠物件は、ATMから交付される1枚の振り込み控えのみである。
しかし、ATMの振り込み控えからは、銀行支店名、口座番号は確認できても、口座名義人の氏名は、カタカナしか表示されない。当然ながら、被害者には、口座名義人の住所も分からないし、氏名の漢字すら分からない。
口座名義人の情報を、民間人に過ぎない被害者が調査しようとしても、独力では、窓口で追い払われるだけである。そこで、わざわざ費用をかけて弁護士に依頼するわけであるが、代理人弁護士が弁護士法23条の2の照会を銀行に行っても、銀行は守秘義務を盾に回答を拒否する。結局、被害者は、どのようにしても、口座名義人の情報にアクセスできない。
ここで、弁護士照会に回答しない銀行を非難するのは簡単である。しかし、照会への回答を現実的に強制する術がない以上、ただ銀行を非難するだけでは、何も現実は変わらない。銀行への悪口を重ねても、ガス抜きの意味すらなく、被害者は全く救われないのである。
このような実情を踏まえて、いかに合理的な法解釈を行うかが、我々法律家、就中、裁判所の任務である。
7 新しい犯罪被害の続発を踏まえた法解釈を
以上のような特質は、必ずしも、おれおれ詐欺事件に止まらない。
近時、マスコミを賑わせる新たな犯罪類型、すなわち、ヤミ金融、架空請求詐欺、インターネット通販詐欺などの事件では、いずれも、犯人は被害者と直接接触を持たず、携帯電話やインターネット等の匿名性の高い通信手段を用いて実行行為に及び、銀行振込をさせる形で被害金を奪っている。
このように、通信手段の発達等の現代社会の特質から発生する新しい犯罪類型が次々と生まれ、多大な被害を生じさせているのであるから、裁判所も、耳目を庁舎内で閉じるのではなく、社会の流れに遅れないよう、世間の実情をよく見極め、事案に則した法解釈を行うべきである。
8 被害者が救済される途
繰り返し述べるが、おれおれ詐欺事件においては、被害者は、実行行為者の影も形も見ることができない。また、犯人が検挙されることも、殆ど期待できない。
とすれば、結局、被害を回復するためには、振込先の銀行口座から金員を回収する以外、現実的な手段は存在しない。
この点を踏まえて、現在、銀行実務においては、警察の要請を受けた銀行口座の凍結という扱いが行われている。すなわち、被害者が所轄警察署に被害届を提出すると、警察は直ちに被害金振込先の銀行支店へ連絡を入れ、連絡を受けた銀行支店は、当該銀行口座を凍結(払い出しを事実上停止)するのである。
このような経緯で凍結された預金から金員を回収することが、被害回復の唯一の手段である。
しかし、警察は、預金凍結はしてくれても、そこから先の被害回復の手続きには、一切協力してくれない(民事不介入)。
また、銀行も、預金を凍結したとしても、被害者に対して払い戻してくれるわけではない。銀行は、口座名義人の同意がない限り、一旦口座に組み入れられた振込金を、振込人に任意に返還することはない。そして、被害届が出ている状況で、後ろ暗い口座名義人が、のこのこと銀行に連絡を取り、振込金の返還に同意する手続を行うはずもない。
この点、被害者に対し、不法行為の実行行為者(電話をしてきた人物)を特定し、その者に対して訴訟を行えというのは、文字どおり、不可能を強いるものである。警察すら殆ど逮捕できない犯行グループを、民間人が、どのような手段により特定できるというのか。かかる議論は、実際には、被害者に泣き寝入りを強いる暴論である。
また、極めて幸運にも、犯人グループが検挙されたとしても、そのような刑事被疑者・被告人らに、見るべき資力がないことは自明である。仮に実行行為者が特定されたとしても、その者らを訴えたところで、被害回復は現実化しない。
結局、被害者個人の被害を真に回復するには、被害者自身が、凍結された銀行口座の口座名義人に対して、民事手続を取る以外にない。具体的に言えば、被害者は、弁護士を通じて、口座名義人に対する訴訟を行い、債務名義(判決)を取得し、同口座を差し押さえるしかないのである。
9 本件訴状の必然性
以上のようなオレオレ詐欺の特質に照らせば、本件のような形態の訴状(被告住所不詳、氏名「被害金振込先の銀行口座の口座名義人であるカタカナ」)は、被害者の司法的救済のために、論理必然的なものとなることが、理解されるはずである。そして、被害者にとっては、民事手続を行う裁判所が、唯一かつ最後の頼みの綱となる。民事裁判所の責務は、極めて重大である。
このように、最後の頼みとして、駆け込んでくる市民の声に答えて、実践的な回答を出すことが、社会が法律家に期待する任務ではないのか。
裁判所の任務は、現代社会の進展に遅れないよう、事案の実情を十分に踏まえて、適切な法解釈・適用を見い出すところにこそある。
10 原命令の社会的意味
以上のような裁判所に寄せられる社会的期待を踏みにじって、原命令は、被害者の唯一の望みを、あっさりと打ち砕いた。
抗告人自筆の文章を、ここで引用する。
「私、弁護士さんから、富山地裁が訴状を却下されたとの連絡を受けたときのショックは、本当に… どうお話しをして言いのか、わかりません。
ただ… ただ… 頭は真っ白、時間を追うごとに…
私の体がけだるく何もする気がおきない状態、もちろん仕事も です。
今も、心ない日々を過ごしております。
【中略】
個人的ですが、あまりにも次から次ぎへとの出来事が、心身つまった状態です。
市民が頼れる警察と銀行… 何回も何回も出向きました。
結果的に、たらい回し。
わらにもすがる想いで、弁護士さんに託しました。
子を想う母心をバカ?
せつないです。」
原命令を受けた抗告人は、同代理人の眼前で、ぬぐっても、ぬぐっても、あふれ出る涙を押さえることは出来なかった。
抗告人代理人としては、一般市民に通じる言葉と常識を用いては、原命令の依って立つ理屈を、抗告人に納得させることは、不可能である。
このような原命令であるから、後記するとおり、批判的に報道されることとなった。また、同様の被害に遭い、これから被害回復のための訴訟を行おうとしている被害者達に、大いにショックを与えている(抗告人代理人への問い合わせも実際にあった)。
抗告審に問いたい。
抗告人に対し、いや、数千人のおれおれ詐欺被害者に対し、常識から判断して、原命令が正当であると納得させることは、可能であるか。
11 補論ー素人に理解可能な議論を
本件のような訴訟形態が無理だとするならば、悪用された口座を管理する銀行を被告として、訴訟を提起するしかなくなる。例えば、弁護士照会に応じないことを違法と構成する損害賠償請求訴訟や、口座名義人を無資力とみなす債権者代位訴訟等の手法である。
そのようにして、銀行を訴えれば、訴えられた銀行は、保身のために、その訴訟の中で、口座名義人の情報を開示してくるかもしれない。そうすれば、銀行への訴えは取り下げて、今度は改めて口座名義人への訴訟を提起すればよいではないか…、云々。
かかる思考回路は、訴状却下を回避する便法として、法律家同士の内輪の知的パズルとしては、あり得るかも知れない。
しかし、まず、このような議論は、訴訟費用の問題、弁護士用の問題、管轄の問題、何より「大銀行」を訴えるという「大それた」行為に被害者がたじろいでしまうという実際的問題を、無視している。
次に、そもそも、このような、いかにも法律屋的な技術論は、はたして、健全な市民の常識に則っているといえるのであろうか。我々法律家は、民主主義社会の依って立つ基盤、すなわち、社会通念、一般常識との乖離が生じていないか、常に、自戒しなければならないはずである。
法的知識のない一般市民である被害者の目線で見れば、自分が振り込み、現にそこに預金の形態でプールされている金員を取り戻すことで、被害回復を図ろうと考えるのは、ごくごく自然なことである。取り戻すとすれば、その口座名義人に対して訴訟を起こし、預金を差し押さえるしかない。当然の流れである。しかも、端的な訴訟を通じて、裁判所の権限で調査してくれれば、被告の情報も出てくるであろう。
とすれば、銀行を訴えるような迂遠な手段を用いず、素直に、本件のような訴訟形態が許容することこそ、社会通念、社会常識に則した、法律解釈なのではないだろうか。
我々法律家は、社会が真に我々に期待している解釈態度とは何かを、常に探究すべきである。
平たく言えば、素人に納得してもらえる、法の解釈適用である。
そこで、次に、法解釈論を行う。
第2 本件訴状における被告の特定
1 「被告の」特定
訴状において、通常、被告の住所・氏名の記載が要求されるのは、それらが、社会的に見て、被告が誰であるかを特定する重要な要素だからである。
しかし、逆に言えば、それらは、所詮、特定のための一要素に過ぎない。
民事訴訟法の要求する内実は、当事者の「住所・氏名の」特定ではなく、「当事者の」特定である。すなわち、当事者(被告)が誰なのか、これは誰に対する訴訟であるのかが判明すればよいのであり(他人との識別可能性)、かつ、それで足りる。住所・氏名そのものの特定を要求しているわけではない。
原命令は、両者の問題を混同し、理論的な誤謬を犯した。
本件においては、特定の普通預金口座について、その口座名義人を被告としている。そして、口座の開設に当たっては、住民登録上の住所が明らかになる証明書を、銀行は確認する義務がある。したがって、本件においては、この世に一つしかない特定の銀行口座について、この世に1人しかいない口座名義人なのであるから、その住所・氏名が原告に分からなくても、他人と識別可能な程度に十分特定されているというべきである。
原命令の誤謬は明白である。
抗告審は、このような単純な理論的誤謬を、踏襲してはならない。
2 訴訟要件と被告の住所ー公示送達制度との関連から
上記のとおり、「被告の」特定(他人との識別可能性)が確保されていれば、訴状は有効である。逆に言えば、被告の「住所の」特定は、訴訟要件ではない。
両者の問題は峻別されるべきであり、この点においても、原命令は理論的な誤謬を犯している。
そもそも、「被告の住所の特定」が訴訟要件でないことは、公示送達制度の存在から明白である。すなわち、公示送達は「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」(民事訴訟法第110条第1項第1号)に行うとされている。とすれば、当事者の住居、居所が知れない場合であっても、訴訟が有効に係属することを、法は当然予定している。
この点、民事訴訟規則第2条第1項第1号が、訴状の記載事項として「当事者の氏名又は名称及び住所」を要求していることとの関係が、問題となる。
まず、法律が規則に優位することは論を待たないから、規則の解釈においては、法律の趣旨に反しないようになされねばならない。そして、法律が公示送達の規定を置いて、住居所不明の場合であっても訴訟を係属させることを予定している以上、同規則は、制限的に解されるべきである。すなわち、同規則は、被告の特定のためには、通常、住所・氏名が必要とされるところから、通常、それらを記載することを求めたに過ぎないと解されるべきである。
そして、氏名や住所が不明であっても、被告の特定(他人との識別可能性)が確保されている例外的な場面においては、法の趣旨に立ち返って、訴訟要件は満たされていると解されるべきである。
本件では、前記のとおり、特定の口座の口座名義人という形で、他人との識別可能性が十分確保されている例外的場面であるから、訴訟要件は満たされているというべきである。
なお、訴状等の送達の関係からは、当然ながら、被告の住所が必要であり、その意味からも、民事訴訟規則が当事者の住所の記載を要求している面があろう。しかし、送達はあくまでも職権でなされるべきものであるから(民事訴訟法第98条第1項)、原告において、被告の住居所を調査する手段がなく、逆に、裁判所おいて、被告の住居所の調査が容易な場合には、裁判所の職権において、被告の住居所が特定されるべきである。
この点、本件のような事案においては、前記のとおり、銀行が口座名義人の情報を弁護士照会で開示しない以上、原告において調査する術はない。他方、裁判所が、調査嘱託という一片の簡易な手段さえ用いれば、銀行は回答してくる。したがって、本件においては、職権送達主義の原則に立ち返り、裁判所が調査嘱託をもって被告の住所を特定すべきである。
3 本件における実際上の特定性
本件においては、被告である当該口座の口座名義人の氏名は、純然たる意味で「不明」ではない。そのカタカナは、明らかになっているのである。
次に、被告の住所も、文字通りの「不明」ではない。それこそ、欺罔行為の実行行為者を特定するかのごとく、雲を掴むように、何も分からないのではない。
口座名義人の住所・氏名は、当該銀行支店は、きちんと把握している。また、捜査関係事項照会を通じて、所轄警察も、きちんと把握している。ただ、いずれも、原告に対して教えてくれないだけなのである。
もちろん、銀行・警察のいずれかが、弁護士法23条の2に基づく照会に回答してくれれば、このような問題は生じないが、現に回答を拒否されている。両者を非難するのは簡単ではあるが、それで事足れりでは、被害者は全く救われない。
これに対し、訴訟係属が生じ、裁判所が職権送達のために調査嘱託を行えば、銀行は回答してくる。それを通じて、訴状の表示も補正できる。全ての問題は、一片の調査嘱託により、解消するのである。
したがって、本件では、「被告の住所・氏名が分からなければ、裁判のやりようがない」という一般論は、全く成立しえない。曇りのない素直な目で見れば、既に被告は一義的に特定されているのである。
氏名・住所の情報を銀行が保有しており、被害者には知りうるすべがなく、裁判所を通じれば情報にアクセスする途があるとすれば、被害者の司法的救済のためには、訴訟を提起し、調査嘱託を申し立てるのが、最も自然な形態である。
逆に言えば、調査嘱託の結果、それでも銀行が回答を拒否して、初めて、「氏名不明」「住所不明」という事態が確定する。調査嘱託を経ないまま、訴状審査の段階で、特定がないと決めつけることは、許されない。
以上から、原命令が、社会常識に反する異様な形式論理に立脚し、結論を誤ったことは、明白である。
4 訴状審査における特定の程度
被告の特定は、判決の効果を有効に帰属させるためにも、当然必要である。逆に言えば、判決の効果を有効に帰属させるためには、口頭弁論終結時までに、被告の特定性が詰め切られれば、足りるということになる。
これに対し、訴訟提起時においては、相手方(被告)が防御の機会を失わない程度に特定されていれば、それで足りるはずである。すなわち、訴訟提起時(訴状審査時)と口頭弁論終結時とで、要求される被告の特定性には、自ずと差異があってしかるべきである。
このように、訴訟提起時に要求する当事者の特定のレベルを、口頭弁論終結時よりも緩和して扱うことは、実務的にも肯定されている。
例えば、東京地裁平成14年5月21日判決がある。
これは、原告が自らを「大統領」とのみ表示して訴訟を提起し、訴状が受理され、被告に送達されたところ、被告から「原告名の記載に不備があり不適法な訴えであるから、却下されるべき」と主張された事件である。
同判決は、
「これらの規定(民事訴訟法133条2項1号、民事訴訟規則2条1項1号を指すー引用者注)は、当事者の記載について、原告と被告が誰であるかが、他人と識別可能な程度に記載されることを要求するのにとどまり、戸籍上の氏名を記載しなければならないことまでをも要求するものではないと解するのが相当である。」
「訴状には通称のみが記載されている場合であっても、それ自体で、あるいはその余の訴状の記載事項と相俟って、原告が誰であるかが他人と識別可能な程度に特定されているといえる場合には、訴状の記載が不備として訴えを却下すべきでない」
「原告が自宅の表札に本名と並べて『大統領』との表示をしていることをはじめ、これを原告個人を示す名称として頻繁かつ多方面に用いており、その結果、かなり多くの者が『大統領』が原告を示すことを認識していることが認められ、その上、訴状には原告の住所地も記載されており、『大統領』との記名でした送達に支障がなかったことが記録上明らかであるから、これらの訴状の記載により、原告が誰であるかが、他人と識別可能な程度に明らかになっているものと認められる。また、原告は、本件第1回口頭弁論に先立って、平成13年11月28日に当裁判所の聴取に応じ、自己の本名が『A』であることを黙示的に認めた上、平成14年2月12日、本件第1回口頭弁論期日において、戸籍上の氏名が『A』であることを認めていることが記録上明らかであるから、遅くともこの時点までには、Aが『大統領』との通称を用いて訴えを提起していることが明らかになったものと認められる。」
と判示して、訴えを適法と認めた。ここからすると、東京地裁は、訴状審査で直ちに却下することなく、審理の過程で原告の特定性を固めていったことが明瞭に読みとれるのである。
なお、その控訴審である東京高等裁判所平成14年10月31日(判例時報1810号52頁)は、以下のように述べ、少なくとも、上記のような地裁の扱いを否定しなかった。
「本件訴訟の経緯に照らせば、現時点において、本件訴えの原告(被控訴人)が本判決書冒頭に被控訴人として表示されたとおり特定されていることは明らかであり、この点において本件訴えが不適法であるとはいえない。したがって、仮に、訴状自体の記載に不備があったとしても、現時点においてはこれが補正されたといえ、現時点で訴状の記載事項が不備であることを理由に本件訴えを却下すべきではない。」
また、青梅簡易裁判所平成15年10月28日判決がある。
この事件も、上記同様であり、被告から「原告が誰であるか他人と識別可能な程度に特定されているとはいえない」として訴え却下を求められた事件である。
同判決は、
「本件原告を特定できるか否かを調査するために、原告に対して『大統領は本名であるか』との旨の質問をしたところ、原告は、戸籍上の氏名はAである旨答えた。原告は、前記質問に答えた後、原告名を補正するかとの旨の当裁判所の質問に対して、補正しない旨を答え、大統領との名称を維持する意向を示した。そこで、当裁判所は職権により、訴状の原告欄に『大統領』との表示がある事実、前記原告が補正しないと答えた事実及び前記原告が戸籍上の氏名はAと答えた事実に基づいて、本件の当事者である原告を特定する表示を『大統領ことA』と認定した。してみると、以上の経過により、本件原告は、『大統領ことA』と特定できた」
と判示して、訴えを有効と認めた。つまり、訴状審査の過程では、当事者の特定について柔軟に扱った上で、審理の経過の中で特定性を高め、最後に職権で当事者を特定して、判決に至っているのである。
以上のような判例に照らせば、本件において、一片の調査嘱託も行わず、直ちに「特定性なし=却下」と即断した原命令は、明らかに失当である。
5 小括
以上から、本件訴状においては、被告は十分に特定されており、また、その住所が不明であっても、それは裁判所の調査嘱託で特定すれば足り、何ら訴訟障碍事由には当たらない。したがって、本件訴状を却下した原命令は、直ちに取り消されるべきである。
理論的な表現はさておき、問題の所在は、極めて単純である。
裁判所が、前記したおれおれ詐欺被害事案の特殊性を踏まえて、実態に即した法の解釈適用を行うか、それとも、杓子定規な形式論に拘泥して、被害者に泣き寝入りを強いるか。
本件は、裁判所がいずれの解釈態度を取るかを、鋭く問うているのである。
第3 他の裁判所の実例
以下の実例紹介において記載した月日は、いずれも平成16年である。
1 東京地方裁判所民事第6部の例
既に、即時抗告の申立書8頁以下で触れた例について、再度詳解する。
これは、事務所の賃料の支払いの際、ATMで振込先の口座番号の入力を誤り、無関係な第三者に送金してしまった原告が、振込先の口座名義人(銀行支店からの連絡に対し任意に返金せず)を相手取って、不当利得返還を請求した事件である。
1月27日
東京地方裁判所へ訴状提出。
被告の表示「住所不明」氏名「【カタカナ】」
併せて、調査嘱託申立。
第6民事部に係属。
2月3日
担当裁判官が、職権により調査嘱託採用を決定。
嘱託事項は、口座名義人の住所、電話番号及び氏名。
即日、担当書記官が嘱託書を発信。
2月9日
みずほ銀行の回答書(顧客取引残高照会の写しを送付)を担当部が受理。
2月13日
上記回答結果に基づき、原告代理人が訴状訂正の申立書を提出。
2月18日
被告本人へ訴状等の送達完了。
2 上記のように、本件訴状と同種の訴状(もしくは保全申立書)を有効として扱った他の裁判所の実例は、既に抗告申立書でも多数紹介したが、さらに、調査の結果、以下のような実例が判明した。
これらの実例は、誇張ではなく各原告代理人弁護士の汗の結晶であり、同時に、これを受けて、裁判所が事案に則した実際的な解釈を行った実績でもある。
3 福岡地方裁判所第1民事部合議係の例
これは、著作権侵害事件について、被害者(著作権者)が、ネット上で販売された著作権侵害物件販売代金の振込先郵便貯金口座の口座名義人に対し、損害賠償を請求した事案である。
3月9日
福岡地方裁判所へ訴状提出。
被告の表示「住居所不詳」氏名「【カタカナ】」
第1民事部合議係へ係属。
3月23日
原告代理人が調査嘱託を採用するよう求める上申書(後に引用)を提出。
3月29日
係属部は合議の上、民事訴訟法186条に基づく調査の嘱託を決定。
即日、担当書記官が嘱託書を発信。
その後、日本郵政公社は嘱託事項に回答。
4月28日
上記回答結果に基づき、原告代理人が訴状訂正申立書を提出。
なお、同事件の原告代理人田中雅敏弁護士及び同長丈博弁護士が作成した上記3月23日付上申書は、本件と同一の争点に関し、極めて説得的に論じており、これを踏まえて、同地裁が調査嘱託を採用したものである。そこで、本事件においても、その内容を抗告理由として主張することとし、以下、同上申書の記載を引用する。
(引用始め)
【引用略】
(引用終わり)
4 山口地方裁判所周南支部の例
これは、本件と同様のおれおれ詐欺事件について、被害者が、被害金振込先の銀行口座の口座名義人に対し、損害賠償を請求した事案である。
8月25日
山口地方裁判所周南支部へ訴状提出
被告の表示「住所不明」氏名「【カタカナ】(株式会社ジャパンネット銀行本店営業部普通預金口座番号○○口座名義人【カタカナ】の口座の名義人)」
8月31日
裁判所より、原告代理人に対し、まず当該銀行に対する弁護士法23条の2に基づく照会を行うよう指示がなされ、原告代理人は直ちに照会を行う。
9月10日ころ
銀行は弁護士照会への回答を拒否。
9月12日ころ
原告代理人が上記結果を裁判所に報告。
裁判所は調査嘱託採用。
9月24日
ジャパンネット銀行が嘱託事項に回答。
9月30日
回答書に基づき、原告代理人が訴状補正書提出。
その後、訴状送達するも、被告は口座登録住所に不在。
10月28日
原告代理人が、同住所に被告がいない旨の調査報告書提出。
11月2日
公示送達申立、採用。
11月24日
第一回口頭弁論期日、弁論終結、判決(請求認容)
5 東京簡易裁判所の例
これは、架空請求詐欺事件について、被害者が、被害金振込先の銀行口座の口座名義人に対し、不当利得返還等を請求した事件である。
東京簡易裁判所第2室は、被告の表示を「住居所不明(株式会社三井住友銀行 新宿西口支店 普通預金 口座番号○○ 口座名義人【カタカナ】)」氏名「グローバルこと【カタカナ】」とする訴状を受理し、その表示のまま、5月6日、判決した(請求認容)。
なお、この事件では、銀行が口座名義人の住所を開示しない旨原告代理人が報告したことを受けて、裁判所は直ちに公示送達を採用し、判決(請求認容)に至っている。
6 西条簡易裁判所の例
これは、架空請求詐欺未遂事件について、被害者が振込先として指定された銀行口座の口座名義人に対し、慰謝料等を請求した事件である。
西条簡易裁判所は、被告の表示を「住居所不明」氏名「【カタカナ】」とする訴状を受理し、1月6日、三井住友銀行に対する調査嘱託を行った(同行は全ての嘱託事項に回答した)。
その後、銀行の開示した住所に被告が所在しないことが判明し、公示送達が採用された上、3月9日、原告の請求を認容する旨の判決がなされた。
さらに、同判決に基づき、4月28日、当該銀行口座に対する債権執行が行われている。
7 新居浜簡易裁判所の例
これは、ヤミ金融のいわゆる押し貸し事件について、被害者が、被害金振込先の口座名義人に対し、不当利得返還等を請求した事件である。
新居浜簡易裁判所は、被告の表示を「住居所不明」氏名「国民保証信販こと【カタカナ】こと【カタカナ】こと○○」とする訴状を受理し、9月17日、東京三菱銀行に対する調査嘱託を行った(同行は口座開設時の書類一式の送付をもって回答した)。
8 本件抗告審の位置付け
以上の実例では、いずれも、本訴および債権執行(預金差押)を通じて、現実に、犯罪被害者の司法的救済が実現したのである。
しかし、万が一、当審において、原命令が維持されるとすれば、遡って、これら地裁、簡裁の判断は、間違いであったということになってしまう。とすれば、今後、同様のケースで、被害者が司法的救済を求めても、裁判所はこれを拒否することになってしまう。
この帰結は、極めて深刻である。
そもそも、これまでは、同種の訴状が各地の地裁で有効として取り扱われてきており、地裁が訴状却下した例は確認できない。したがって、即時抗告審において、この種の問題を高裁が正面から審理をするのは、今回が初めてと思われる。
万が一、最初の高裁判例により、原命令のような解釈が肯定されてしまえば、これまで全国各地で営々と積み上げられてきた犯罪被害者救済のための実務、実践は、全て覆される。そして、その高裁判例に依拠し、救済を求める声をことごとく門前払いする地裁、簡裁が、被害者の前に立ち塞がることになるのである。
そのような事態に立ち至れば、国民の司法に対する信頼が地に墜ちることは、言うまでもない。
現に、通常人の社会常識に反する原命令に驚いた報道機関多数が、既に、これを批判的に報道しており、また、抗告人代理人への問い合わせも相次いでいる。
・共同通信インターネット配信、11月27日
・日経新聞、11月28日朝刊
・北日本新聞、同
・岐阜新聞、同
・京都新聞、同
・四國新聞、同
・中日新聞、同
・北陸中日新聞、同
(これらは例示であり、日刊スポーツ、北國新聞、岩手日報、神戸新聞、福島民友新聞、静岡新聞、山陽新聞、東奥日報、河北新報、秋田魁新報ほか、約20紙に掲載された模様)
・読売新聞富山版11月29日朝刊
・朝日新聞富山版11月30日朝刊
当然ながら、抗告審の判断(社会常識に反する原命令が維持されてしまうのか否か)は、全国的に注目されている。
このまま漫然と原命令を肯認し、国民の司法への信頼を失墜させる事態を招来するのか、それとも、事案に即した実践的な法解釈により、犯罪被害者を救済し、司法に対する国民の期待に応えるのか。
抗告審に課せられた任務は極めて重大であり、そのような自覚を十二分に抱いて審理に当たられるよう、強く求める。
第4 結語
以上から、原命令は、法の解釈適用を誤った不当、違法なものであることは明白であるから、速やかに取り消されるべきである。
2年後に始まる「日本司法支援センター」の富山支部の準備を弁護士会側で行っている作業チーム。
同センターについては、当初の大風呂敷の割に、実情がよく見えてこない状態が続いており、手探り。
本日午後、弁護士会がドクターをお招きして、「医療安全とカルテ」というテーマで研修会。
今日は自分の仕事をする時間が殆ど取れない…

